人から聞いた話なので、所々うろ覚えなのはご了承ください。
ある街に、猫を飼っている家族がいました。
その家族は5人家族で、両親と2人の子供、それとおじいさんの5人です。
猫は、おじいさんがこの家で家族と同居を始める前から飼っている猫だそうです。
そのおじいさんは釣りが趣味で、よく近所の池で釣りを楽しんでいたそうです。
その猫もよく一緒にいたそうです。
釣った魚が貰えるんじゃないかと思ってるんだよ、と、その家の長男は話していました。
ある日、そのおじいさんは病気で亡くなってしまいました。
主人を亡くした猫はどこか元気が無さそうでしたが、それでもいつもどおりの毎日を送っていたそうです。
ある日、二人の子供は猫がいないことに気づきます。
以前までは、おじいさんと一緒に釣りに行っている時間ですが、そのおじいさんは亡くなっています。
まさか、と思っておじいさんが釣りをしていた池に向かうと、その猫がいました。
時折、二人の子供も一緒になっておじいさんの釣りを見ていたからわかりますが、そのときと同じ場所に猫は佇んでいました。
「もうおじいちゃんはいないんだよ」と猫に諭しますが、猫はその場を動かず、小さく鳴くだけでした。
仕方なくその場を離れて家に帰りましたが、夜には猫も帰ってきました。
それから数年、猫は毎日のように池に向かっていました。
池に行かなかったのは、雨や風がひどい時だけでした。
その日はおじいさんも釣りに行かなかったからです。
それ以外の日は、おじいさんが釣りに行く時間に合わせるようにして池に向かい、1日中池の前に佇んでいました。
ある日、二人の子供は猫の様子を見に行きました。
猫も歳なので、体調を気遣ったのです。
その日は曇っていました。
雨は降らないそうで、昼頃には晴れるという話です。
それでも心配になって猫の様子を見に池に向かいました。
やはり、猫はいつもどおりの場所に佇んでいましたが、今日はどうにも機嫌が良さそうです。
猫の下に行こうと思っていると、曇っていた空が晴れ始め、雲の切れ間から光が差しました。
眩しさに目を細めた兄弟が見たのは、在りし日と変わらぬ姿で釣りを楽しむおじいさんの姿でした。
おじいさんは釣り竿を持った手の反対の手で猫をなでています。
目を疑った子供たちは慌ててその場に急行しますが、既におじいさんの姿はありませんでした。
それから数ヵ月後、猫は老衰で死んでしまいますが、動けなくなる日までずっと池に佇む毎日でした。
あそこなら、死んでしまったおじいさんと会えていたのかもしれません。